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    兵庫県立考古博物館 加西分館 古代鏡展示館
    事業課長 学芸員
    中村 弘 様

    当館は、2017年4月14日にオープンした古代中国鏡専門の博物館です。地元加西市在住の美術品蒐集家、千石唯司氏のご厚意により、世界でもここにしかないと言われる最古段階の中国鏡を含む316面が寄贈・寄託され、その一部が展示されています。今から約3,700年前、古代中国の伝説の王朝と言われる「夏」に青銅製の鏡らしきものが作られました。今でこそ鏡は人の顔を映す化粧道具というのが一般的な認識ですが、当時は光を反射し、人を幻惑させることを目的とした呪術具であったようです。また青銅鏡の外形は、丸い形が基本ですが、それは太陽と月に由来しているためで、光り輝くものという意味合いが強かったようです。他にも漢代には、鏡は男女を結ぶものとして婚礼の際に用いられたり、再会を誓った男女が二つに割った鏡を持ち合ったりしています。現代の日本においても嫁入り道具は最初に鏡台を運ぶという風習が残っており、人が鏡とどのように向き合ってきたのか比較することもできます。ご来館いただいた方には、展示品を通して各時代の「鏡に込められた想い」を感じていただければと思います。その一方で鏡は人の顔を映す化粧道具として定着していきますので、可能な限り明るく白銀色に仕上げることが重要となります。最古段階の青銅鏡は銅成分が多く、赤茶色で暗くなるためきれいに映すことができません。そこで白銀色にするため錫の比率を増やすのですが、増やしすぎると脆くなり割れてしまいます。割れずに制作するには高度な技術が必要となるのですが、中国鏡の制作技術は唐の時代が極致で、多くの技術は伝承されておらず、現代の技術でも再現することができません。それほど貴重な歴史的、美術的作品としての青銅鏡ですが、円盤形という不安定な形に加えてガラス同様に脆く割れやすいので、万一の破損には非常に気を配る必要がありました。特に兵庫県は阪神・淡路大震災という苦い経験もしていますし、中国鏡等の専門家で構成された「千石コレクション調査研究委員会」からも免震装置の設置をという提言もありました。そこで、地震の影響を受ける可能性のある展示についてはTHKさんの免震装置を設置することになりました。設計については、展示ケースの方が先に進んでいたので、ケース内免震装置が必要となり、かつ長周期振動対策も考慮したストローク長を合わせる必要があったのですが、THKさんの免震装置は限られた展示ケースのスペースをベースにして自由設計ができる構造でしたので非常に効果的でした。しかも開館日が決まっていた短い工事期間にもかかわらず、臨機応変によく対応していただけました。今後も貴重な展示物に対して免震化の必要性がますます高まってきます。ぜひとも建築・展示工事の設計段階から、文化財に関係した免震技術の知識を有しておられる専門業者さんにプロジェクトに参加していただき、免震の専門家としての意見を各種設計に反映し、リスクマネジメントをしてもらえるようなシステムを作っていただけると文化財の保護と活用に大きな力となるでしょう。

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