中小地震から大地震まで対応できる新型免震台
弊社ではこれまでも半導体製造における縦型炉用の免震台を開発しておりましたが、従来型免震台※1は、大地震(おおよそ震度5強以上)※2に対して、縦型炉本体及び石英パーツの損傷を防いで機能を維持することを目的としていました。
一方で発生頻度が比較的高い中小地震(おおよそ震度3~5弱程度)※2でも、揺れにより縦型炉内のウエハーに欠陥が生じることがあり、生産への影響からその対策が求められていました。
新型免震台は、そのような半導体業界からのニーズに応えるために開発された、中小地震から大地震までワイドレンジに対応する免震性能切替機構を備えた免震台です。
揺れの大きさに応じて免震性能を切替えることで、地震発生後、短期間での生産再開に貢献します。
※1 弊社、従来型免震台(受注生産品)
※2 大地震、中小地震の震度階目安は、実大振動試験で使用した地震波を元に弊社が独自に分類したものです。
新型免震台の震度別の免震機能
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- 中小地震(震度3〜震度5弱)
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ウエハーを守る
縦型炉内のウエハー脱落防止、
ずれ抑制により、ウエハー欠陥の発生を防ぐ
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- 大地震(震度5強〜震度7)
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縦型炉本体・
石英パーツを守る縦型炉内本体の転倒防止
縦型炉内の石英チューブや
石英ボートの脱落、損傷防止
従来型・新型の各免震台の対応領域
縦型炉用新型免震台の構造と特長
新型免震台は「基本型」「復元機構付き」「性能切替/減衰機構付き」の3種類の各支承ユニットの組み合わせで構成されています。
搭載する縦型炉の形状や仕様に合わせて支承ユニットの数や組み合わせを変更できるため、ご要望に応じた自由度の高い設計が可能です。
主な特長は下記の通りです。
- 01
- 従来型免震台よりも低い加速度で起動し、特定の可動域を超えると免震性能が切替わる二段階の特性を備えた新機構の性能切替/減衰機構付き支承ユニットにより、揺れの大きさに応じた個別の免震性能を発揮。
- 02
- 縦型炉の荷重を支える支承ユニットを複数配置し、各支承ユニットは鋼製フレームとプレートで連結される構造で、搭載する縦型炉の形状や仕様に合わせて自由度の高い設計が可能。
- 03
- 支承ユニットは減衰・復元機構、免震性能切替機構の有無で 3種類をラインナップ。各支承ユニットの組み合わせにより、最適な性能を有する免震台を構成。
縦型炉用新型免震台の設置イメージと構造
3種類の支承ユニット
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- 基本形
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- 復元機構付き
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- 性能切替/減衰機構付き
すべての支承ユニットに使用されるLMガイド
3種類の支承ユニットはすべてに弊社LMガイドを使用しており、その荷重支持/転がり特性を免震技術に活用しています。また、「性能切替/減衰機構付き」支承ユニットでは、性能切替機構にもLMガイドが用いられています。
新機構の構造
「性能切替/減衰機構付き」支承ユニットの性能切替方向には、荷重を支えるメインLMガイドに並列したサブLMガイドが組込まれ、これらの可動域に応じて、第一段階と第二段階の特性を個別に設定しています。
また、搭載縦型炉の荷重、入力地震動に応じて第二段階の特性が調整できるよう、ばね及び粘性ダンパーも複数の型式をラインナップしています。
二段階可動方式を用いた免震性能切替機構
新型免震台の性能検証(実大振動試験)
「新型免震台」へ実稼働状況の縦型炉を搭載し、中小地震から大地震まで数パターンの地震動*を入力した実大振動試験を実施しました。
振動試験は縦型炉内の所定位置にウエハーを設置した状態で実施。中小地震を入力した振動試験でのウエハー状況は、「従来型免震台」と「非免震」では一定入力レベル(震度)以上になるとウエハーのずれや脱落が生じたことに対し、「新型免震台」では、所定位置からずれや脱落がなく、ウエハー保全性能が検証されました。
また、大地震に対しても「新型免震台」に搭載された縦型炉は、本体及び付帯部品に損傷がないことが確認されました。
* 観測地震波①El Centro ②Taft ③Hachinohe3波にて試験を実施。また、比較検証のため「従来型免震台」及び「非免震」でも同様の振動試験を実施しています。
震度階ごとのウェハー状況(El Centro波)
※入力レベルはElCentro_50cm/sに対する比率
※「〇」はずれや脱落がなかった場合、「×」はずれや脱落が生じた場合を示す
大地震を想定した免震台振動試験結果(Hachinohe波)
震度6弱の揺れを想定した「新型免震台」の実大振動試験での振動台(入力)と免震台 (応答)の加速度は、X方向入力 358galに対して応答 138gal、Y方向入力 434gal に対して応答 136galとなり、大地震に対する免震性能を検証するとともに、縦型炉本体 及び石英パーツに被害が生じていないことを確認しました。